Jinshari

ジンシャリ Vol.45

ジンシャリ Vol.45

【表紙の1枚】 真柏 「武甲」(A-023)

幹は根元から裂けるようにして左右に広がっており、枝先に向かうに従って、複雑な曲線を描いている。とりわけ左側に伸びた幹は、先端が白いジンと化し、迫力のある造型美を見せる。
埼玉県の秩父地方で山採(やまど)りされたこの作品には、秩父を代表する名山・武甲山(ぶこうさん)にちなんだ銘が付けられている。
推定樹齢:350年
https://www.bonsai-art-museum.jp/ja/collection/a-023/

展示の裏側

~盆栽ファーストな展示替え

大宮盆栽美術館では、コレクションギャラリーの盆栽の展示替えを毎週行っています。

民具や紙の資料等を扱う一般的な博物館や美術館では、数週間から1か月程で展示替えを行います。しかし、当館で扱っている盆栽は生き物であり、太陽光や外気に当てる必要があるため、盆栽保護の観点から毎週の展示替えを行っています。

お気づきかと思いますが、コレクションギャラリーの空調を弱く設定しているのは、盆栽保護のためです。観覧に当たっては、寒かったり暑かったりとご不便をおかけしますが、当館は盆栽ファーストなので、ご了承いただければと思います。学芸員が展示替えをする時も、空調を使用していませんので、暑さ寒さが身に応えます。

展示替えではありませんが、毎週日曜日の閉館後には、展示中の盆栽を庭園に出して一晩外気に当て、樹木の状態を維持するということも行っています。

展示替えは、休館日である木曜日(木曜日が祝日で開館している場合は、閉館後)に行っています。展示していた盆栽を盆栽技師が搬出した後、卓(しょく/盆栽を載せている台)の入れ替えを学芸員が行います。卓は盆栽を引き立てるものなので、派手過ぎても、地味過ぎても良くありません。盆栽技師が展示に適した盆栽を選び、それに合わせて学芸員が卓を選ぶという作業を事前に行っています。

更に、座敷飾りに使用する掛け軸や添え物を、盆栽や季節に合わせて展示します。そして、展示のために手入れをした盆栽を盆栽技師が設置して、展示の完成となります。

当館の盆栽は名品が多く、大型のものもあり、中には大人が2人で抱えないと持ち上がらないものがあります。当然、その盆栽に合わせる卓も大型で、盆栽の重量に耐えられる頑丈な材質のものとなるため、卓だけでも相当な重さになります。

生きている芸術と言われる盆栽の展示では、盆栽を維持管理し、引き立てるための様々な工夫をしています。皆様にお見せしているのは、完成した展示ですが、その裏では盆栽ファーストの工夫があることを思い描いてみると、違った面白さも味わえることと思います。

展示替えの様子(真の間)

展示替えの様子(真の間)

【季節の展示】盆栽展〈四季〉ー4月・芽吹きの季節

職人のしごと

大隈重信候が愛蔵⁉ 巨大黒松盆栽の植え替え

盆栽は、鉢に植え込んでから何年も経つと、根が生長して鉢内に詰まり、水分や養分の吸収ができなくなってしまいます。そのため、数年ごとに鉢から株を抜き、古い土を落として根をほぐし、伸び過ぎた根を剪定して鉢に植え込むという「植え替え」を行います。

植え替えの適期は木々が芽吹きを迎える3月から4月。

ここでは、昨年(令和4年)4月に行った、黒松(A-091)の大型盆栽の植え替えの様子をご紹介します。この黒松は、早稲田大学の創設者である大隈重信が愛蔵していたと伝えられています。樹高が1メートルを優に超え、幅も1.5メートル近くの大きさのため、かなりの重量があります。持ち上げるのも大変な作業で、複数の盆栽職人が共同で植え替え作業を行いました。

作業はまず、鉢から黒松を外さなければなりませんが、びっしりと詰まった土をほぐすには大変な力が必要です。鉢の側面と土の間に鎌を入れ、少しずつ根かきで固まった根をほぐしながら、古い土を落としていきます。

また、側面だけではなく、底面もまんべんなく行い、伸びた根のほとんどを短く切り詰めます。根を処理された姿をみると、枯れてしまうのではと心配になります。しかし、木が元気であれば再び旺盛に発根するのでご安心を。根処理とは、根が伸びることに栄養を使い、木を大きくさせないという盆栽ならではの培養技術でもあるのです。

根の処理が終わったら、再度鉢に植え込みます。 別の鉢に植え替える場合もありますが、今回は同じ鉢を使用しました。しかし、盆栽の正面を変更したため、植え替え前と後では印象が変わって見えます。写真を見比べていただくと、盆栽は生き物ではありますが、同時に職人が手掛けた作品でもあることがよく分かるかと思います。

鉢から黒松をはずす

鉢から黒松をはずす

固まった古い土を落とす

固まった古い土を落とす

植え替え前の正面

植え替え前の正面

植え替え後の正面(水やり中)

植え替え後の正面(水やり中)

伝大隈重信侯旧蔵の黒松(A-091)

ボランティア通信

ボランティア活動の本格的な再開が楽しみ

私達ボランティアは、日本の伝統文化の一つ、盆栽の良さを多くの方々へ紹介したいと活動し、併せて月例研修会での自由な意見交換を通し、盆栽の知識及びガイド力の向上を図っています。

コロナ禍での制限が解除となれば、次の主活動が可能と考え、楽しみです。

①国内、海外からの団体来館者への盆栽ガイド(ボランティアによる英語を含む5ケ国語対応も可能)。「観て、聴けて良かった、また来たい、誰かに話したくなる」、こんな評価を受けるガイドを目指しています。

②年間を通しての各種盆栽づくり講座(ワークショップ)、そして、希望する学校、公民館等へ出向いての盆栽づくり参画。このことは実技知識が増え、同時にガイド内容の充実へも反映できています。なお、私達の役割は準備・整理作業を含む講師補佐です。

③美術館が参加する地域盆栽関連行事への協力も活動の一つです。

(ボランティア 和光俊幸)

小学生への展示案内(ギャラリー)

小学生への展示案内(ギャラリー)

小学生への展示案内(真の間)

小学生への展示案内(真の間)

小学生への展示案内(庭園)

小学生への展示案内(庭園)

海外の方へのガイド(庭園ガイド)

海外の方へのガイド(庭園ガイド)

子ども向けワークショップの指導補助

子ども向けワークショップの指導補助

来館者への展示解説について、詳しくはこちら

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