Jinshari

ジンシャリ Vol.51

ジンシャリ Vol.51

【表紙の1枚】 庭園リニューアル! “山水の池” 誕生

大宮盆栽美術館は、令和6年11月5日から令和7年3月20日まで休館していましたが、庭園改修が完了したため、 令和7年3月21日からリニューアルオープンします。
令和7年4月に大宮盆栽村の開村100周年を迎えるにあたり、美術館においても今回の庭園改修によって展示空間が整備され、盆栽を「魅せる美術館」となりました。

展示の裏側

盆栽庭園“山水の池” その景色とは

 大宮盆栽美術館の見どころの一つは、開放的な屋外で名樹を堪能できる盆栽庭園です。
 令和7年は大宮盆栽村が開村100周年を迎える年。そんな記念すべき一年に、より盆栽に優しく、人にも優しい環境で盆栽を鑑賞いただくため、庭園の池をリニューアルしました。改修に当たっては、令和6年11月5日から休館し、令和7年3月21日に再開しました。ようやくお披露目できた新しい池について、今号で詳しくご紹介します。

「澗底(かんてい)の松」の精神
 新しい池のデザイン理念の源には、「澗底松」という禅の言葉がありました。改修計画の当初に当館の盆栽管理官であった山田登美男氏(清香園園主)から提示されたものです。「風吹不動天辺月 雪圧難摧澗底松〈風吹けども動ぜず天辺(てんぺん)の月、雪圧(お)せども摧(くだ)け難(がた)し澗底(かんてい)の松〉」(『嘉泰普灯録』)、煌々(こうこう)と地上を照らす月は強い風が吹いても動じることはなく、谷底に生える松もまた大雪をものともしないという禅書からの一文で、困難に動じない強い精神性を喩(たと)えた語です。
 目が眩むような夏の酷暑や冬の厳しい寒さのなかにあっても、青々と葉を茂らせ、大自然のたくましい姿を見せてくれる松の盆栽。「澗底松」の精神を具現化した山水景を根底のイメージとし、新しい池がデザインされました。
 谷底に清水を湛(たた)える泉のごとき風景を演出するため、もともとあった東屋(あづまや)が建つ築山(つきやま)を景色の一画に取り込み、階段状の高低差を設け、水の流れを生み出しました。自然石で囲われた池の中央には、谷底の浮島をイメージした岬が突き出し、突端に飾られた盆栽の瑞々(みずみず)しい姿を鏡面となった水面に映し出します。流れ落ちる水の音を背景に、岩と水、そして盆栽が調和し、新たな池は山水の池へと生まれ変わりました。

【関連ページ】3月21日、大宮盆栽美術館がリニューアルオープンします!

職人のしごと

機能性…猛暑の育成環境と鑑賞環境の向上

 庭園の池の改修において一番の課題となったのが、年々過酷さを増す夏場の猛暑における盆栽の育成管理と、鑑賞環境の向上です。
これらの対策と改善のため、池の周囲にミスト装置を設置しました。当館では夏の間、庭園の周縁部には寒冷紗(かんれいしゃ/日よけの覆い)を張り巡らせて直射日光から盆栽を守りますが、池の周囲は美観上、覆いを設置していないため、ミストは盆栽そのものと周辺の温度を下げるための大切な工夫です。さらに、ミストが路面を冷やし、盆栽だけでなく、来館者の涼も確保できるという大きなメリットがあります。
 また、池の中央に島を設置するに当たり、展示する盆栽の運搬や水遣りなどの保守管理の動線を確保するため、島までの通路を設置しました。景観の美しさを損なうことなく、盆栽管理などの機能性を確保しています。ぜひ、新しくなった盆栽庭園に足をお運びください。

水が流れ落ちる段差

水が流れ落ちる段差

ミスト

ミスト

島と通路

島と通路

サポーター通信

休館中の活動報告…この機会にみんなでスキルアップ!

 大宮盆栽美術館では、ボランティアによる「ミュージアム・サポーター」を結成し、当館事業を共に担っていただいています。今回のサポーター通信では、11月5日から3月20日の休館中の活動についてご報告します。
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 休館中もサポーターは元気に活動していました。資料整理、国際盆栽アカデミーの指導補助の活動を継続するとともに、再開後の展示ガイドを充実するための研修を実施しました。研修では、盆栽の見どころを話し合い、設定時間内にまとめたガイドシナリオを作成するグループワークを行いました。また、休館中にできた時間を使い、サポーター自らがデザインしたオリジナル缶バッジも作成しました。今後の活動で、この缶バッジを着ける予定ですので、ぜひ見かけたらお声がけください。
 そして、今年迎えた盆栽村100周年を記念する活動も行っています。資料整理活動では、図書整理の傍ら、戦後に発行された盆栽の専門雑誌から盆栽村の関係記事をリストアップする作業を行い、知見を深めています。他にもサポーター全員で作成中の100周年記念グッズがあります。こちらはまだ秘密!お披露目をお待ちください。

ガイド研修の様子

ガイド研修の様子

見どころを話し合う

見どころを話し合う

【関連ページ】展示解説(ウェルカム・ミュージアム!(展示ツアーガイド)、団体ガイド)

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